令和5年度高等学校ICT活用授業改善推進事業
1 事業への取組
今治西高等学校では、一昨年度より愛媛県で実施されている高等学校ICT活用授業改善推進事業の「授業改善に先進的に取り組む指定校」として新しい時代に求められる生徒の資質・能力の育成につながる指導法や課題設定、評価に関する実践研究を行っています。また、今治西高等学校でしかできない学びを、学習や特別活動などを通して行っています。
2 令和5年度の取組
(1)高等学校ICT活用授業改善推進事業講演会
令和5年6月28日(水)14:00~15:30の日程で、愛媛県総合教育センター教科教育室の加藤伸弥先生による「課題研究の取り組み方とICT活用方法について」の講演会を実施しました。
全日制・定時制から45名の教員が参加し、愛媛県総合教育センターと本校をオンラインでつないで実施しました。講演会では、課題研究における論文の検索サイトや、ICTを用いた効果的なプレゼンテーションの方法、見やすく分かりやすいポスターの作成方法など、日々の課題研究の指導ですぐに生かせる技術について、丁寧に教えていただきました。
(2)ICT授業改善推進事業公開授業(第1回)
令和5年11月2日(木)に、授業改善推進事業公開授業(第1回)を以下のとおり実施しました。他校から参加してくださった4名の先生方を含め、約20名が授業参観や研究協議に参加しました。ロイロノートやMicrosoft teamsなどを用いて授業が展開され、歴史総合の授業では「日中戦争はなぜ終わりの見えない戦争になったのか」古典探究では「司馬遷はどのような思いを持って『史記』を執筆したか」について、生徒たちは、それぞれグループで話し合いながら考察を深めました。共同編集によって意見をまとめたり、各グループの意見を一人一台端末で確認したりと、ICTならではのメリットが感じられるものでした。第2回の公開授業は1月に実施予定です。
歴史総合 主題「日中戦争」 村上 曜介 教諭
(授業者の言葉)
生徒は、今日のような活動は苦手なのではと考えていたが、想像以上に意欲的な取組ができていました。反省点としては、コメントをつけるなど、生徒の多様な意見を深めることができればよかったです。生徒が発表する際の提示方法など、ロイロノートの効果的な用い方を、今後も研究したいと思います。
古典探究 主題「『史記』鴻門の会」 一色 晃輔 教諭
(授業者の言葉)
欠席生徒が多く、事前準備で生徒に負担をかけることができなかったが、限られた時間で生徒はよく考えていたと思います。普段はロイロノートを利用していますが、クラスでの共有、復習や欠席生徒への対応に活用できると考え、今回はTeamsを利用しました。意見を入力していると、頭が働きにくかったようです。普段はもっと話し合いができるクラスです。また、本文に至るまでのあらすじを把握する時間がなかったことが、課題として残りました。
(3)ICT授業改善推進事業公開授業(第2回)
令和6年1月22日(月)に、授業改善推進事業公開授業(第2回)を実施しました。他校から参加してくださった8名の先生方を含め、約30名が授業参観や研究協議に参加しました。歴史総合の授業では「ベトナム戦争はどのような性質の戦争だったのか」をメインテーマに、ロイロノートや地図を使って授業が進められ、生徒はグループでエキスパート活動やジグソー活動、クロストークを行って考察を深めました。文学国語では『舞姫』を題材に「本文の表現をもとに豊太郎やエリスの心情を考察する」をテーマとして、担当班の生徒によるMicrosoft teamsで共同編集したスライド資料とホワイトボードを用いた授業が展開されました。どちらもロイロノートで集められた意見を一人一台端末で確認、比較するなどICTのメリットを生かしながら、地図や板書も併用することで理解を深める工夫がなされた授業でした。
歴史総合 主題「ベトナム戦争」 村上 曜介 教諭
(授業者の言葉)
導入部分で前時の復習を予定していたが、生徒とのコミュニケーションがとりづらく、雰囲気が暗くなってしまいました。ベトナム戦争のイメージを理解することが目標でしたが、「深める」ところまではいきませんでした。生徒の回答を比較しながら進めれば良かったです。授業後に生徒から難しかったという反応があり、問いの設定が適切かの検討や、時間配分に工夫が必要だったと思います。
文学国語 主題「本文の表現をもとに登場人物の心情を考察する(『舞姫』)」 一色 晃輔 教諭
(授業者の言葉)
最後の質疑応答が積極的に行えていました。根拠を持って考えることができてきているのではないかと感じました。準備段階では、できるだけ生徒の読みを残しながら、読解として根拠を示せるようにサポートしています。今回の担当班は、ロイロノートで回答を予め募集し、添削するなど聞く側の生徒たちの理解が深まるよう、よく工夫していました。最後の評価の所までお見せできなかったのが残念でした。
3 令和4年度の取組
(1) 高等学校ICT活用授業改善推進事業講演会
令和4年6月28日(火)14:00~15:30の日程で、株式会社LoiLoの澁谷洋平様によるロイロノートについての講演会を実施しました。
全日制・定時制・分校から59名の教員が参加し、2教室と分校をオンラインでつないで実施しました。講演会では、基本的な機能、アンケートやシンキングツール、共有ノートの使い方など、授業や学習評価で活用できる技術について、澁谷先生のお好きなラーメンや、今治市のマップ等を用いながら、楽しく教えていただきました。
昨年度より、生徒に1人1台PCが導入され、Teamsやロイロノート等のアプリを活用した授業が増えています。先進事例も紹介していただきましたので、各自研究し、今後の授業に生かしていきたいです。
(2)ICT授業改善推進事業公開授業(第2回)
※第1回は、令和4年10月24日(月)の学校訪問研修と兼ねて実施しました。
令和5年1月23日(月)に、授業改善推進事業公開授業(第2回)を以下のとおり実施しました。他校から参加してくださった5名の先生方を含め、約20名が授業参観や研究協議に参加しました。ロイロノートやGeoGebraなどを用いて授業が展開され、生徒たちは話し合いながら大学入試問題に挑戦し、複素数平面についての理解を深めていました。考えを共有したり、概念を可視化したりできるICTならではのメリットが感じられるものでした。効果的な使用方法について、さらに情報交換を進めていく予定です。
数学Ⅲ 主題「複素数平面」 渡邉 弘樹 教諭
(授業者の言葉)
数学Ⅲに入ってまだ1週間という時期での取組でした。ド・モアブルの定理の証明が長くなりましたが、生徒の現在の理解度を考慮し、既習内容の定着を図るという意味では良かったと思います。GeoGebraは初めて使用しましたが、複素数平面上の点の回転などがしやすいので、今後も勉強して活用したいです。班活動の際には、班の中で教え合う雰囲気ができていました。生徒には今後も積極的に活動に取り組んでほしいです。
(3)ICT授業改善推進事業校内研究授業
令和5年2月6日(月)に、授業改善推進事業校内研究授業を以下のとおり実施しました。約20名が授業参観し、放課後批評会を実施しました。ALTのウィリアム・オークリー先生のモデルプレゼンテーションを見た後に、代表生徒が神社・仏閣について、パワーポイントを用いて英語でプレゼンテーションを行いました。聴衆の生徒たちはプレゼンテーションを聞いて確認問題に取り組んだり、評価シートを記入したりしました。発表生徒たちは、ICT機器を効果的に活用できており、日頃の取組が伺える授業でした。
コミュニケーション英語Ⅱ 主題「Ashura-A Statue with Tree Faces-」濱口 司 教諭
(授業者の言葉)
授業最初にパソコンが使えなくなるというトラブルがあり、時間がおしてしまって質問の時間を設けることができませんでした。フィードバックができなかったので、時間配分に注意したいです。指導目標に、日本の持つ歴史的文化的魅力を伝えるという項目がありましたが、発表者は意欲的に発表してくれていました。聞いている生徒にとっては1時間の内容として、少し多かったかもしれません。
4 令和3年度の取り組み
(1) 高等学校ICT活用授業改善推進事業講演会
令和3年10月1日(金)に、愛媛県総合教育センターの情報教育室の先生方による講演会を実施しました。実践的なスキル向上を目指して、全日・定時・分校を合同で65名の教員が参加しました。今年度より、生徒に1人1台PCが導入され、Teamsやロイロノート等のアプリを活用した授業が増えています。授業での効率的な活用方法や、課題の作成や提出について実習を行い、先進事例の紹介をしていただきました。
(2) ICT授業改善推進事業公開授業(第1回)
令和3年11月16日(火)に、授業改善推進事業公開授業(第2回)を以下のとおり実施しました。ICT機器を活用した授業で、それぞれ約20名の先生方が授業参観と、研究討議に参加しました。授業の中では、生徒が作成した問題に取り組んだり、歴史的意義を問う記述式の問いに答えたりして、生徒同士の考えが共有できるICTならではのメリットが感じられました。効果的な使用方法について、さらに情報交換を進めていく予定です。
2限目 化学 主題「探究活動-有機化合物の構造決定-」 山能 研司 教諭
(授業者の言葉)
Microsoft Whiteboardを使用し、生徒が作成した問題にクラスで取り組みました。Whiteboardは他の生徒が書き込みをしている様子を、リアルタイムで共有できます。他の班の発表を聞きながら、考えを深めていくことができました。まだ、生徒が使い慣れていなくて、発表の声もやや小さかったところが反省点です。授業後は、Teamsで解答を共有することでフォローしていきたいと考えています。
3限目 日本史B 主題「東アジアの交易-日明貿易と足利義満-」 田窪 理志 教諭
(授業者の言葉)
授業開始時の小テストを、ロイロノートで行っています。教科書の内容の要点は、KP法ですませました。KP法は、紙に書いて前に貼ることで、重要な語句や要点を確認しながら授業進めることができるメリットがあります。記述で解答する問いを2題設定し、生徒に解答をロイロノートのカードに記入させて提出することで、班員と共有します。さらにそれを班の意見としてまとめ直して授業で発表し、各班の意見をクラスで共有しました。ロイロノートは普段の授業でも使用しており、生徒も慣れた様子で扱っています。
(3) ICT授業改善推進事業公開授業(第2回)
令和4年1月25日(火)に、授業改善推進事業公開授業(第2回)を以下のとおり実施しました。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、Zoomを使ったリモートでの公開授業となりました。実験の方法を動画で予習して、授業では実験結果の考察に集中する取組や、単元を通してポートフォリオを作成して評価する取組が行われました。
2限目 化学 主題「実験-銀滴定法(モール法)を利用したしょうゆの塩分濃度測定-」 山能 研司 教諭
(授業者の言葉)
今回はICTを活用した実験を行いました。事前に実験動画を撮影し、生徒たちにその動画を家で見て予習してから臨む形をとったため、授業内での実験の手順等の説明を省略することができました。実験中の様子を撮影し、撮影した内容が提出課題にリンクしているので、実験の内容全体が有意義なものとなったと考えています。一部フォローを必要とする場面もありましたが、概ね良好であったと考えています。
共通課題は難関大に対応したものにしました。レポートを通して、班で課題を共有しながら取り組んでほしいという思いで実施しました。これらをレポートで残すことで今後、生徒の評価にも繋げていくことができると考えています。
3限目 日本史B 主題「戦国大名の分国支配・都市の民衆と町衆」 田窪 理志 教諭
(授業者の言葉)
前回の研究授業ではKP法を使ったので、今回はパワーポイントを使ったスライド方式に切り替えてみました。視覚的にはパワーポイントの方がよいが情報量を詰め込みすぎるので注意が必要と感じました。今回、考察に用いた設問が東大入試の過去問なので生徒には難しく、読み取るべき部分がわからなかった生徒が多かったように思いました。生徒の間で解答の共有ができたのが3名だけでした。不十分な解答が多く時間が足りなかったのが理由だと思いますので、問題をどのように解かせるか再考したいと考えています。最後にOPP(ワンページポートフォリオ)をする時間を設定したが2分程度と時間がとれませんでした。1時間の授業で収まらない内容については、OPPを活用していますが、こちらも工夫しないといけないと思いました。
5 令和2年度までの取り組み
今治西高等学校では、高等学校授業改善推進事業の「授業改善推進校」として新しい時代に求められる生徒の資質・能力の育成につながる指導法や課題設定、評価に関する実践研究を行ってきました。令和2年度の事業を掲載します。
(1) 授業改善推進事業講演会
令和2年10月1日(木)に、代々木ゼミナール教育総合研究所入試情報関西分室の山根正義先生にご来校いただき、進学指導研修会を実施しました。主な内容は、①2021年度入試の特殊事情②共通テストについて③大学入試情報と受験指導の3つで、全定合わせて58名の教員が参加しました。
(2) 授業改善推進事業公開授業(第1回)
令和2年11月17日(火)に、授業改善推進事業公開授業(第1回)を以下のとおり実施しました。ICT機器を活用したアクティブ・ラーニング形式の授業で、それぞれ約20名の先生方が授業参観と、研究討議に参加しました。研究討議では、ICT機器の活用方法について、情報交換が行われました。
2限目 数学 主題「不定方程式を用いて避難所を設営しよう」 近本 優大 教諭
(授業者の言葉)
ロイロノートを使用し、不定方程式の問題について合同式を用いて考える、少し難しい内容を扱った授業でした。連立方程式であるとの誤解から、解が1つしか出なかったり、戸惑ったりする所もありましたが、生徒はお互いよくコミュニケーションをとってグループ活動を行っていました。道具に振り回されないように、さらに研究し生徒の可能性を広げたいと考えています。
3限目 国語 主題「伊勢物語-東下り」 森川 大和 教諭
(授業者の言葉)
生徒がよく参加し、一緒に授業を作ろうというモチベーションが高かったと感じました。予習もよくできていました。大和物語の世俗性と伊勢物語の歌徳という高尚性を取り上げたかったのですが、少し時間不足でした。妻への想いが今回の中心だったので、それができたのはよかったと思います。各班の単語レベルの妻への想いを表す言葉が、それぞれの班の言葉を並べてみることで深まって見えてきたので、ICT機器を使った効果がありました。歌の解釈は3年生でも難しいものでしたが、視覚化して手順を踏み、頑張ればできることを生徒に示せたのはよかったと思います。
(3) 授業改善推進事業公開授業(第2回)
令和3年1月26日(火)に、授業改善推進事業公開授業(第2回)を実施しました。ICT機器を活用したアクティブ・ラーニング形式の授業で、それぞれ約15名の先生方が授業参観と、研究討議に参加しました。研究討議では、第1回に引き続きICT機器の活用方法について、情報交換が行われました。
2限目 数学 主題「相加平均と相乗平均の大小関係」 近本 優大 教諭
(授業者の言葉)
証明を題材にした授業展開を考えて実践しました。また、相互評価を実施することも今回の研究授業では目標としました。証明に関しては、生徒の解答を用いて、注意すべき点を確認することができたと思います。教材としては、間違いに気付かせることがメインであったため、時間を多くとりたかったものの十分ではなかった点は課題です。一方、ロイロノートを用いての発表や、解答の提出はしっかりでき、他者との記述の違いを観察することで考えを深められたと思います。
3限目 国語 主題「小説『城の崎にて』」 森川 大和 教諭
(授業者の言葉)
生徒に授業させてみるという挑戦をしました。これまで6班に分けて各班に6回授業を担当してもらいました。発表では楽しく学習させる工夫もありましたが、全体として、今日の班は自分たちの意見を提示するにとどまり、対話が基本である「授業」になっていなかったのが悔やまれるところです。本校の生徒は結論ありきで過程を大切にして思考する力が弱いので、質問を重ねてそれを埋めることが必要だと考えています。ICT機器の効果的な使い方の指導も必要であり、反省点が多く見つかったので改善しながら実践したいと思います。